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34.オバマの折鶴 ~アメリカから見た日本~

2017年 第1号  - 三鬼 康 -


  •  オバマ大統領が六割以上の高い支持率に見送られてホワイトハウスを去ってもう半年ちかい。
  •  まだ選挙運動をやっているようなさわがしいホワイトハウスを横目に成熟とは何か、とふと思い巡らした。
  •  オバマの八年間にアメリカ世論と政治の両極端がはっきり見えるようになった。
  •  過去の実績やエピソードにオバマの個性が色濃くにじみ出ていてそれに反発する人が多いからだ。
  •  就任当初の経済の大混乱を手早く治めたことは別としても、その後のオバマケアーと呼ばれる医療保険制度をすでに国民皆保険が常識の世界に遅れてやっと導入したこと、そして敵国キューバとの国交回復では意見がわかれた。
  •  アメリカ人に共通する徹底した個人中心主義と共産主義アレルギーとを何とか制して時代に合った政治の道筋をつけた力量は誰も否定できない。
  •  昨年5月にはアメリカ現職大統領として初めて広島を訪れた。
  •  被爆者たちの手をとり一緒に過去の行為を悔い、平和維持を誓ったことが日本人に限らずアメリカ人の心にも深く残っている。

オバマの折鶴 アメリカから見た日本

  •  原爆投下は「一億玉砕の狂気」に終止符を打つための荒療治、とこちらでは片付けられていたものを、一人のアメリカ人としてオバマの理想がそのままにしておけなかったのだろう。随分前から広島に行きたいと考えておられたそうだ。真珠湾にも日本の首相に来てもらって一緒に慰霊するつもりだと、ケリー国務大臣やスタッフに早くから伝えて周到に準備していたという。
  •  開戦と終戦の象徴でもある真珠湾と広島については両国民の間にはそれぞれ違ったわだかまりが残っている。そのうえオバマ大統領の広島訪問をめぐっては韓国、中国までが謝罪させるべきだと日本の世論を揺さぶった。
  •  アメリカが日本に謝罪すれば中韓両国への日本の謝罪のあり方にも新たな局面が期待できると言う算段だ。だがそういった次元とは違ったもっと固い日米関係を残しておきたかったのだろう。
  •  未来志向一点で行ったのはよかった。
  •  共産主義国キューバとの関係でも喉もとのトゲを除いた形にしたし、イランの核開発に歯止めを掛けイラン革命以来断絶している国交回復への期待を膨らませた。また突然ラオスに現われては人々を驚かせた。退任前にベトナム戦争の後始末の進捗を見極めるためで、地雷の早期除去も約束した。
  •  でもこうした仕事をのっけから評価しないで弱腰を批判する人たちがアメリカには大勢いる。
  •  特にシリア内戦はロシア、トルコに任せっきり、人道無視の政権が毒ガスを使って自国民を巻き添えに殺しても勧善懲悪を貫けない泣き虫大統領だと。
  •  強姦による妊娠さえ神の摂理に従えと言って避妊を認めないマッチョな保守派がそういった人達で中には大統領選候補に名を連ねるような者さえいるのだ。
  •  オバマの闘いはこれらに向けられた。
  •  堕胎のみならず同性愛結婚までも医療、税制で合法的に国が保護すべきだと超リベラル発言をしたためLGBT族(レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)を不必要に勢いづかせている。政治通に言わせれば、これは性差別、保守の温床だった宗教界に投げ込んだオバマの化学兵器ということらしい。
  •  今ではこの問題をめぐって国民意識が保守とリベラルの間で鋭く対立し、教会や学校、各党でも世代間の葛藤も絡んで収集不能に陥っている。
  •  自爆テロが普通の市民生活を脅かす昨今、平和と安全をどう守るか、武闘か妥協か、アメリカ国民の意見を分断したまま武闘派にバトンが渡った。
  • 「内科医は知識豊富なくせに実行しない、外科医は知らないくせにすぐにメスを手にする」
  • という冗談がぴったり当てはまりそうな状況だ。
  •  些細なことでも世界中を巻き込んでしまう昨今、どっちに転ぶのか、ハラハラ、ドキドキの連続である。アメリカ人の世界認識と人々と社会の成熟度を客観的にみて、責任ある態度を考えればこそ争いの深みにはまらない方に重心を置くのが良識と言うものではないだろうか。
  •  バラク・オバマは今年55歳、後任の大統領より20歳近くも若い。
  •  次女のサーシャが高校を卒業するまでワシントン市内に留まるそうだ。広島に出掛ける前に一緒に折鶴をおったあの女系一家四人がまだここに住んでいると思うと、なんとなく心が和む。

オバマの折鶴 アメリカから見た日本

  • 何も期待するわけではないが、二期目の大統領選挙戦が始まるまであと三年足らずの間、揃って首都に居てくれたら良いなと思う。

(2017年5月8日)


 

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